[目的]これまでに詳細な報告のみられていないヒト卵管組織内におけるマクロファージ(Mφ)について、月経周期に伴う局在および数の変化、その細胞性格について検討した。[方法]患者同意の下に得られ、正常の月経周期を有する30例のヒト卵管について、抗ヒトMφモノクローナル抗体PM-1K(単球およびほとんどのMφを認識)およびPM-2K(主に組織Mφを認識)を用いた免疫組織化学的ならびに超微形態学的検討を行った。[結果]卵管の解剖学的部位(峡部、膨大部、采部)での検討では、PM-1KおよびPM-2K陽性細胞数は、ともに部位による差は認められなかった。次に、各々の月経周期で比較すると、PM-1K陽性細胞は増殖期に比べて月経期および分泌期初期・中期に増加する傾向がみられた。一方、PM-2K陽性細胞数は月経周期を通じて少数で、差は認められなかった。超微形態学的には分泌期のMφは、細胞質内に小型のライソゾーム顆粒などの細胞内小器官の発達がみられたが、空胞や貪食顆粒はほとんど認められなかった。同時期の卵管上皮下間質の血管内には単球・Mφ系の細胞が著しく増加していた。月経期のMφは偽足を出し、細胞内小器官が発達し、様々な形状の貪食顆粒や空胞が特徴的であった、また、この時期の卵管平滑筋細胞は、増殖期に比して、細胞内のフィラメントが乏しくなり、ライソゾームと判断される顆粒や空胞が出現していた。[結論]卵管組織内には、細胞性格の異なる2種類のMφが月経周期の時期を異にして存在し、各々の時期の卵管の生理機能に応じて役割を担っている可能性が示唆された。
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