1)エストロゲンによるB細胞の分化・増殖の調節過程における骨髄間質細胞の役割の検討 エストロゲンを添加した軟寒天培地上で、マウス脛骨より採取した骨髄細胞をIL-7存在下で培養し、IL-7依存性のB細胞コロニー形成に対するエストロゲンの作用を検討したところ、エストロゲンはB細胞コロニー形成を抑制しなかった。一方、骨髄間質細胞株ST2とマウス骨髄細胞の共存培養系においては、エストロゲンはB細胞の分化を濃度依存的に抑制した。以上の結果より、エストロゲンは骨髄間質細胞に作用し、IL-7には依存しない分化初期のプレB細胞の分化・増殖を負に調節していることが示唆された。 2)エストロゲンのB細胞に対するアポトーシス作用の検討 マウス骨髄細胞をエストロゲンないしはグルココルチコイドを含む培地にて培養し、Flow CytometryによりそれぞれのB細胞に対するアポトーシス作用を解析したところ、グルココルチコイドはB細胞のアポトーシスを促進したが、エストロゲンはB細胞に対しアポトーシス作用を示さなかった。またグルココルチコイドは、上記1)のIL-7依存性のB細胞コロニー形成を抑制したことから、エストロゲンによるB細胞の分化調節作用はアポトーシス作用によるものではないことが判明した。 3)エストロゲン欠乏マウスにおける骨髄及び末梢血中でのプレB細胞の変化に関する検討 卵巣摘出マウスを用い、骨髄及び末梢血中でのプレB細胞の変化をFlow Cytometryにより解析したところ、骨髄中ではプレB細胞が骨量減少に先立ち著明に増加しており、エストロゲン欠乏により骨髄におけるB細胞造血が促進されることが明らかとなった。また末梢血中でも同様にプレB細胞の増加が観察されたが、その増加は骨髄に比して顕著なものではなかった。以上の結果よりエストロゲン欠乏による造血亢進作用は骨髄における局所的なものがあることが推察され、末梢血では脾臓やその他の臓器による髄外造血により修飾を受けている可能性が示唆された。
|