ニューロペプタイトの一種であるVasoactive Intestinal Peptide(VIP)が、IgA産生におけるスイッチ因子であるかどうかを以下のように検討した。 慢性扁桃炎によって外科的に摘出されたヒト扁桃よりB細胞を分離後、さらにIgD^+B細胞を分離して、各種濃度のVIPと抗CD40抗体で培養した。 (1)IgAの測定:10日間の培養後、細胞上清中のIgAは、VIPが10^<-10>M以上になると抗CD40抗体(0.1μg/ml)存在下で有意に上昇した。VIP単独、抗CD40抗体単独刺激では有意なIgA産生は認められなかった。 (2)Sterile germ-line transcriptionの誘導:クラススイッチの前に必ず起こるgerm-line transcriptionをreverse transcription polymerase chain reaction(RT-PCR)によって調べてみると、VIP単独、抗CD40抗体単独刺激の両方でα germ-line transcriptionの誘導を認めた。 (3)環状DNA分離と環状スイッチDNAの増幅:Nested-PCRを行い、環状スイッチDNA(Sα/Sμ)の増幅を試みた。VIP(10^<-9>M)と抗CD40抗体(0.1μg/ml)刺激後のB細胞からのみ、環状スイッチDNAの増幅が可能であった。得られたPCR産物からクローンを得、その塩基配列を求めた。得られた塩基配列では、他のクラス(IgGやIgE)へのクラススイッチと比較し、環状スイッチDNAの構成に特別な違いはなかった。 以上より抗CD40抗体存在下でVIPがヒトB細胞におけるスイッチ因子であることを同定した。
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