モアレトポグラフィー法は、光の干渉現象を利用した非接触的な三次元計測法であり、測定対象の表面の形を等高線という形で二次元の画像上に三次元情報を表示することができる。また純粋に光学的な計測法であるので、測定と画像再構築のための時間を必要とせず本当の意味での実時間での測定が可能である。そこでわれわれは、モアレトポグラフィー法によって得られた人間の顔面形状とその変化をビデオで動的に記録した。本研究では、正常者10名および顔面神経麻痺患者30名の顔面表情運動を写真撮影した静止画像およびモアレトポグラフィー法を用いたビデオ動画により記録した。さらにこの記録をフォトCDおよびデジタルム-ビ-(Quick Time Movie)に変換することにより、「モアレトポグラフィー法による顔面表情運動データベース」を構築した。デジタルム-ビ-化することにより動画は、時系列をもった一連の静止画像とみなすことが可能となり、静止画像としてフレーム間で細かい変化を比較検討することも可能となるし、動画像としてパターンの変化の速度を測定することも可能であった。これらのデータから正常者と顔面神経麻痺患者を比較してみると、後者では正常な顔面神経運動が最後まで終了せず途中で中断すること、および正常者でみられる表情をつくるときにみられる共同運動がうまくいかないことにより、自然な表情をつくることが出来ず病的で不自然な表情が出現していることが判明した。また顔面神経麻痺患者では、病期の変化、麻痺の回復によりその時期に応じた特定のパターンが現れることも判明した。
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