平成8年度、現在までRT-PCR法、cDNAのクローニング、塩基配列の決定を主に進めてきた。また in situハイブリダイゼーションの準備もほぼ終了した。本年度の研究で、まずラット蝸牛よりバソプレッシンレセプター、カテコラミンレセプターの発現を同定することに成功した。バソプレッシンレセプターに関してはV1a、V2レセプターがRT-PCR法にて検出され、このレセプターに関してはすでに塩基配列も決定している。現在in situハイブリダイゼーション法によるこれらのレセプターの遺伝子発現の局在同定を進めている。予備的実験の段階ではあるがバソプレッシンV1a、V2レセプターは幼若ラットの蝸牛神経節、血管条に発現しているようである。バソプレッシンはV1aレセプターを介して血管の収縮を引き起こし、V2レセプターを介して腎尿細管における水の再吸収を促進する。その意味でこのデータはバソプレッシンが蝸牛においても微小血流や、水の輸送に関与していることを示唆するもので興味深い。カテコラミンレセプターに関しては、アドレナリンのβレセプターがRT-PCR法にて蝸牛より検出された。現在塩基配列の決定作業中である。他にも数種類の興味あるレセプターの発現を蝸牛より同定している。例えばANPレセプター、ATPレセプターなどである。内耳の恒常性維持に血中もしくは局所的に分泌されたホルモンが何らかの役割を果たしていることが示唆されるデータである。今後これらについてもin situハイブリダイゼーション法による発現の局所同定を行う予定である。
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