正常成人20名を対象とし、垂直方向に視運動性ステップ刺激60deg/Sを60秒与えた後、視運動性眼振(OKN)の利得、完全暗所にして視運動性後眼振(OKAN)の初期速度(IV)、時定数(TCs)を検討した結果、それぞれ上向き優位の上下差があり、さらに耳石器に加わる重力の関与についても検討を加える為に、被験者の姿勢を正面座位、側臥位、懸垂頭位と変化させたときもこの上下差はあるものの、上下差の比は、統計学的に減ることがわかった。そこで、重力方向の変化が耳石器に浸透させるに充分な時間をとるために、体位変換後に2時間経た後にOKNの利得、OKANのIV、TCsがどのように変化するかを検討した。長時間の重力方向変化は、OKANのIV、TCの上下差には影響を及ぼさないことがわかった。現在までに眼球運動記録を垂直、水平の二次元でとらえて計測、臨床統計解析できるレベルまで可能となり、以上のような結果が得られた。しかしながら、回旋成分については有意な結果は得られなかった。重力1Gのかかっている地球上で頭位変換のOKANに及ほす影響は、さらなる長い時間経過が必要であることが推察された。
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