活動性のぶどう膜炎を有する患者から、十分な説明と同意の後、前房水および末梢血中の単核球細胞を得、フローサイトメトリーにて解析した。主な疾患はサルコイドーシス、Vogt-小柳-原田病、HLA-B27陽性急性前部ぶどう膜炎、特発性ぶどう膜炎であった。既報と同様に、ほとんどの症例では前房における炎症細胞はTリンパ球が主体であり、その多くはCD4陽性のいわゆるヘルパー細胞であった。また、末梢血リンパ球ではヘルパー細胞中、約60%がメモリー細胞であったのに対し、前房水ではほとんどがメモリー細胞で、ナイーブ細胞は稀であった。そして、これらの細胞の多くがアポトーシスに関連するFas抗原を高率に表出していた。 また、前房水の炎症細胞をin vitroで培養したところ、光学顕微鏡および電子顕微鏡にてアポトーシスと思われる形態変化を認めた。この形態変化は末梢血では認められなかった。ネクローシスと区別するために、新たにTUNEL法染色を用いて、より確実な形態的な観察を行っている。また、生化学的に、DNAのラダー形式の有無を検討したが、前房水から得られる細胞数が少なく、判定困難である。 現在、Fas抗原の発現とアポトーシスとの関連を研究するため、抗Fas抗体やステロイド剤を添加し、培養を試みている。しかし、新鮮なリンパ球の解析と異なり、培養後は、細胞が損傷し易く、フローサイトメトリーでもTUNEL法を用いてもアポトーシスの判定には注意を要すると思われる。これらの結果はまだ得られていない。 ヒトのぶどう膜炎における前房水中へのリンパ球の浸潤及びその除去においてアポトーシスの関与が強く疑える研究結果である。今後、さらにアポトーシスとの関連因子を研究し、ぶどう膜炎における免疫学的機序の解明が必要である。
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