human T-cell lymphotropic virus type l(HTLV-I)感染に関連してぶどう膜炎が発症することが疫学的に証明され、HTLV-I associated uveitis(HAU)という疾患概念が確立された。症例研究を主体とする臨床研究の結果、網膜血管表面の白色の顆粒付着が、他のぶどう膜炎でみられないHAUに特徴的な臨床所見として浮かび上がってきた。この白色顆粒付着は、HTLV-I感染リンパ球が網膜血管外に遊走して、血管表面で何らかの増殖反応をおこしているものではないかと推定し、この仮説を検証するひとつの手段として、リンパ球の血管外遊走の第一段階である血管内皮接着に関与する血中の接着分子とその発現を修飾するサイトカインについて検索した。 HTLV-I感染者の原因不明のぶどう膜炎20例(HAU群)を対象とし、HTLV-I感染者で既知のぶどう膜炎を発症した6例(HTLV-I(+)ぶどう膜炎(+)群とぶどう膜炎を発症していない8例(HTLV-I(+)ぶどう膜炎(-)群)、HTLV-I非感染者のぶどう膜炎8例(HTLV-I(-)ぶどう膜炎(+)群)をコントロールとし、それぞれ血漿のsICAM-1、IL-6、TNF-αを測定して比較した。 sICAM-1はHAU群で35θ±150ng/ml、HTLV-I(+)ぶどう膜炎(+)ぶどう膜炎(+)群で313±209ng/ml、HTLV-I(+)ぶどう膜炎(-)群で335±223ng/ml、HTLV-I(-)ぶどう膜炎(+)で310±140ng/mlであった。IL-6はHAU群で1.6±2.1pg/ml、HTLV-I(+)ぶどう膜炎(+)群で1.5±0.9pg/ml、HTLV-I(+)ぶどう膜炎(-)群で1.3±1.1pg/ml、HTLV-I(-)ぶどう膜炎(+)群で1.4±1.2pg/mlであった。TNF -αはHAU群で5.7±1.9pg/ml、HTLV-I(+)ぶどう膜炎(+)群で5.2±0.9pg/ml、HTLV-I(+)ぶどう膜炎(-)群で5.5±1.3pg/ml、HTLV-I(-)ぶどう膜炎(+)群で6.3±1.3pg/mlであった。いずれも対象とコントロール群間で有意差はなく、仮説を指示するような結果は得られなかった。
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