体外循環による膜型人工肺を用いた治療法(以下ECMOと略す)施行時に生じる末梢血管透過性の過剰亢進におけるchmical mediatorの過剰あるいは不適切な分泌を明らかにするために、臨床例でECMOを施行した新生児を対象として、ECMO開始前、開始後1時間、24時間、以後24時間毎、終了後の各ポイントにおいて血中TNF-α、カテコラミンを測定した。末梢組織の浮腫のパラメータとしてBIA-103を用いて体幹のインピーダンスを血液採取と同時に測定し検討した。対象とした新生児ECMO症例は本年度は少なく、1例にtumor necrosing factor-α(TNF-α)、カテコラミン(アドレナリン、ノルアドレナリン)、体幹のインピーダンスを測定した。コントロールとして新生児手術症例の体幹のインピーダンスを測定した。体幹のインピーダンスは新生児手術症例では術前値を100%すると術後1時間後106±0.6%、24時間後93±0.19%、以後24時間毎はそれぞれ100±0.21%、107±0.18%、104±0.15%、102±0.15%、112±0.16%と術後1日目にのみ軽度の低下を示した。ECMO症例では、それぞれ66%、71%、116%、121%、87%、147%、172%と開始後1時間及び1日目に前値より低値を示し、末梢組織で水分貯留の傾向を示した。またECMO症例で体幹のインピーダンスの低下を認めた時期には、TNF-αの有意な上昇を認めなかった。またアドレナリン、ノルアドレナリンは、共に前値より低下を示した。 今後、ECMO症例数を追加すると共に、本研究をさらに進め、他のchmical mediatorを測定し、ECMO施行中に末梢血管透過性の過剰亢進現象を来す原因となるmediatorを究明する予定である。
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