これまでに、シェ-グレン症候群(SS)口唇小唾液腺実質の破壊・消失はアポトーシスによるものであり、さらにこのアポトーシスにFasが関与している可能性をin situ TdT(TdT)反応およびFas免疫染色を用いて示してきた。本年度の計画は、1)Fasリガンドの局在を検索すること、2)炎症細胞での発現が確認されたならばその細胞種・亜系を同定すること、一方、3)電顕的にTdT陽性細胞の形態を検索し、4)アクティブクロマチンの局在を検索することであった。1)抗Fasリガンド抗体をもちいて免疫染色を施行したところ、SS唾液腺実質内の細胞にFasリガンドの発現がみられた。また、この局在は連続切片でFas陽性細胞、TdT陽性核の局在と多数の症例で一致していた。一方、2)実質内でのFasリガンド発現細胞を同定するために、連続切片において抗Fasリガンド抗体、抗CD8抗体をもちいて検索したところ、実質内に浸潤した一部のCD8陽性T細胞にFasリガンドの発現もみられたものの、ほとんどは実質細胞において発現していた。この結果は、Fas/Fasリガンド系がオートクライン、あるいはパラクラインに実質細胞のアポトーシス、すなわちSS唾液腺の消失に関与することを強く示唆している。3)電顕的にTdT反応をpre-embedding法によって検索をこころみたが、pre-embedding法では反応がうまくいかなかったため、post-embedding法で検索した。TdT反応陽性核の局在は光顕レベルでのそれとよく一致した。また、アポトーシスによって活性化・あるいは標的となるアクティブクロマチンの局在は、ヘテロクロマチンに集中しており、ユウクロマチンおよび核小体はネガティブであった。これらは、今回もちいたTdT反応の有効性を示すとともに、ヘテロクロマチンにおいてDNAの断片化がおきていることを示している。
|