唾液腺は排泄管導管の閉塞により腺房部の著しい荒廃を生じるが、閉塞原因の早期除去により正常構造への回復する。腺組織の再生過程では導管様構造が腺終末部に認められ、再生完了に伴いこの細胞は消退する。本研究はこの導管様構造の出現と消退の意義について検索した。 ラットの排泄管導管を結紮すると導管の拡張、腺房部の萎縮・消失を生じアポトーシスによる細胞数の減少が観察された。しかし、介在部細胞では粗面小胞体およびGolgi装置の発達、分泌顆粒の形成がみられ、導管様構造の構築が認められた。解除群では1〜2週で導管末端部に多数の導管様構造の形成が認められ、腺房の回復が観察された。再生過程にみられた導管様構造は、結紮解除後4週で構成細胞に多数の細胞内空胞の形成がみられ、その放出に従い介在部細胞への移行が観察された。また、アポトーシスによる細胞数の減少も観察された。BrdU陽性細胞は、結紮群では導管部に、解除群では導管部と再生腺房細胞に多数見られた。しかし、介在部導管および導管様構造では極めて少なかった。雌性ホルモンであるエストロゲンレセプター陽性細胞は、結紮群では拡張した導管と介在部に、解除群では導管部と導管様構造に多数観察された。 以上の結果から、腺房部の再生は残存腺房細胞の増殖により再構築されることが示唆された。この再生過程で特徴的所見を示す導管様構造は、主として介在部細胞が顆粒合成を生じることで構築されるものであり、その形態変化に雌性ホルモンが重要な役割を持つものと考えられる。またその消退は細胞内空胞の形成とその放出、およびアポトーシスによってなされ、その結果、常態時の介在部導管へと変化することが示唆された。
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