カテプシンEは消化管上皮、リンパ系組織、泌尿器系組織、および血液細胞などに限定的に存在する非リソゾーム性酵素である。最近免疫組織化学的、及び生化学的研究からカテプシンEが小胞体やエンドゾームに存在することが明かとなった。カテプシンEのアミノ酸配列には、現在までに推定されている小胞体残留シグナルというものは存在しない。そこでカテプシンEの小胞体貯留機構について組換え型CHO細胞、組換え型NRK細胞、ラットミクログリア、ラット腹腔マクロファージを用いて[35S]メチオニンでパルスラベルを行った。細胞抽出液にカテプシンEの特異的抗体で免疫沈降し、SDS-ポリアクリルアミド電気泳動の後フルオログラフィーで解析した。更に種々の細胞内輸送阻害剤などを用いて解析した。加えて免疫蛍光抗体法や二重染色法などでカテプシンEの局在様式を形態学系に観察した。得られた結果は以下の通りである。 1)組換え型細胞では2時間以上小胞体に貯留しているのに対し、貧食系細胞(ラットミクログリア、腹腔マクロファージ)では合成後小胞体に貯留されることなくエンドゾームなどの酸性コンパートメントへ輸送或いは一部分分泌された。2)組換え型細胞ではカテプシンEには免疫沈降で結合蛋白は見つからなかった。しかし、貧食系細胞には免疫沈降で結合する蛋白が検出された。3)組換え型細胞では小胞体に貯留した分子はカルシウムイオノフォアなどのシグナリングによりエンドゾームへ移行した。以上のことからカテプシンEは細胞特異的に小胞体に貯留し、エンドゾームへの輸送にはある結合蛋白の関与が示唆される。更に小胞体に貯留したカテプシンEはシグナルで機能部位へ輸送されると推察される。
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