研究概要 |
Chambersらの方法に準じ、生後1日齢のWistar系ラットから摘出した左右脛骨,大腿骨より破骨細胞を単離した。破骨細胞は15%FCSを含むIB培地にて培養した。実験群には、500pM CSF-1を添加した。アクチンの局在を底面より2μmの間隔で断層し共焦点レーザー顕微鏡にて観察するとCSF-1無添加の対照群では、破骨細胞のアクチンはリング構造を形成せず、細胞内の上部から下部に一様に分散していた。CSF-1添加の実験群では、アクチンリングを持つ破骨細胞が、CSF-1添加1時間後から出現し、経時的に増加した。アクチンリングは、細胞上部には存在せず、底面に局在し破骨細胞の極性化が認められた。また破骨細胞の細胞内Caは、CSF-1添加直後に核及び膜付近で一過性に上昇し、それ以後一部の核と伸展部位の膜付近のみ周期的なCaの上昇が数回観察された。またそれに伴い細胞内のpHの上昇が起こり、細胞外へのH^+の排出が確認された。CSF-1とNa^+/H^+交換体の特異的阻害剤であるアミロライド誘導体の同時添加により、細胞膜の急速な伸展、融合、アクチンリング形成、細胞内pHの上昇といった一連のCSF-1によって引き起こされる現象は完全に阻害された。またこの特異的阻害効果の示される用量では、破骨細胞数には影響が認められなかった。免疫抗体染色による結果では、すべての破骨細胞は、NHE1を強く発現していた。CSF-1無添加の破骨細胞ではNHE1は細胞質全体に一様に染色され、CSF-1添加により極性化した破骨細胞では、NHE1のリング状構造がアクチンの分布と近接するように観察された。 CSF-1 レセプターを介した細胞内情報伝達機構は、Na^+/H^+交換体の活性化を誘導し最終的にアクチンリングを持つ極性化した破骨細胞に分化誘導されることが示唆された。
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