研究概要 |
口腔癌患者にする養子免疫療法をより効果的で確実な治療法にするために、投与する細胞について、末梢血リンパ球(PBL)と比較して自己腫瘍に対してより選択的な細胞障害活性を示すことが報告されている腫瘍組織浸潤リンパ球(TIL:Tumor Infiltrating Lymphocytes)の性状および細胞障害機構を解析することが必要であると考えられる。今回は、TILの細胞障害機構に関与する接着分子を解明するため、各種モノクローナル抗体を用いてその細胞表面抗原の検索を行い、末梢血リンパ球(PBL)から誘導されたLAK細胞と比較検討した。 (方法)口腔癌患者(扁平上皮癌)のうちから任意に選択し、腫瘍原発組織からTILを分離し、350JRU/mlのIL-2存在下で約2週間培養し活性化細胞を誘導した。比較対象の末梢血リンパ球は検体の得られた同一人より採取し、同様にLAK細胞を誘導した。細胞表面抗原の検索は、CD3,4,8,16,NKH-1,HLA-DR,TCRα/βを用い、フローサイトメーターを使用して2重染色法により行った。 (結果)TILからIL-2で誘導された培養2週間目の細胞は、約80%が活性化細胞(HLA-DR+)であり、約90%はT細胞(CD3+)で、約10%がNK細胞(CD3-NKH1+)であった。またCD3+細胞のうち約80%がTCRα/βを有する細胞であった。これらのpopulationは、PBLから誘導されたLAK細胞とほぼ同様であった。しかし、CD4およびCD8陽性率は、PBLではそれぞれ約15%および60%であったのに対して、TILではそれぞれ約50%であり、これらの接着分子の細胞障害性への関与が示唆された。
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