研究概要 |
本研究の目的は、放射線感受性を決定する重要な機構と考えられるDNA二重鎖切断修復に必須の因子であるKu80タンパク質に人工的に変異を加え、その変異タンパク質が放射線感受性に影響を与えるかを調べることによって、Ku80タンパク質の機能解析を行なうことである。ターゲットは、その配列上、Ku70とダイマーを形成すると予想されているロイシン-セリン繰り返し構造部とした。 ヒトKu80cDNAは、慶応大三森博士より供与頂き、発現させるための細胞(Ku80遺伝子を欠損するxrs-5)は、英国Sussex大学Dr.Jeggoより供与頂いた。ヒトKu80cDNAを含むplasmidを鋳型として、PCRによって5'側756bpを増幅し(3'側にEcoRV部位を含む)、これをTAクローニングベクターで発現ベクターでもあるpCR3(lnvitrogen)にサブクローニングした。sense方向に挿入されたプラスミドを選択し、EcoRV、Xholで消化した後、ベクターを含む断片を精製し、Ku80cDNA3′側coRV-Xhol断片をligateして全長Ku80cDNAを含む発現plasmidを得た。(pCR3Ku80)。最初のメチオニンから数えて、6番目と7番目のメチオニンの間に繰り返し構造が存在するので、それぞれのメチオニンから翻訳が開始するように、PCR-assisted in vitro mutagenesisによって、2つの変異plasmidを作製した(pCR6Met ,pCR7Met)。野性型、変異型plasmidをxrs-5細胞にリポソーム法によってtransfectionし、G418によって選択を行なって多くのクローンを得たものの、ヒトKu80タンパクはWestern blotによってほとんど発現が認められなかった。そこで、発現ベクターをpBKRSVに組み換え、実験を繰り返したところ、6Metを発現するクローンが1つだけ得られたが、発現量は不十分であった。 従って,現在までのところまだ結論は得られていないが、今後技術的問題を克服して目的を達成したいと考えている。
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