今回の研究の目的として、イヌ下顎第三小臼歯に実験的歯周炎を惹起し歯周治療を行った後においてプラークコントロール下における矯正的圧下及び保定(実験群)とプラークコントロール単独(対照群)による臨床的歯周組織改善の比較、さらに分岐部における骨欠損の組織学的評価をあげた。臨床的歯周組織改善のパラメーターとして、PPD、PAL、角化歯肉幅、歯肉辺縁の変化、Periotoron値の測定を行った。術後実験群と対照群を比較して有意差があったのは、PALと歯肉辺縁の変化であった。つまり実験群において有意に臨床的付着の獲得と歯肉辺縁の位置の歯冠側方向への移動が示された。臨床的付着の獲得の量は圧下終了時に0.60±0.25mm(n=5)、保定終了時に0.90±0.29mm(n=5)であった。この圧下終了時の結果は森本の報告を支持するものであり、さらに今回保定時にも臨床的付着の獲得が維持され、圧下時に比較すると少ないが臨床的付着の獲得が増加傾向であった。しかしこの臨床的付着の獲得が新付着であるかどうかは組織学的評価を行ってみないと、明確なことはわからない。今回の目的に組織学的評価もあげていたが、実験期間中にはその結果を得るまでには至らなかった。従って今後組織学的評価を行い、新付着が確認されれば、そのメカニズムについてさらに研究を発展させていく予定である。
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