近年、歯周病の進行によって喪失した歯周組織の回復、再生を期待した修復的回復的外科手術が、歯周治療で広く応用されるようになってきたが、その歯周外科処置後の創傷治癒過程で細胞成長因子の歯周組織再建に関する検討が少ない。また、このときの細胞外マトリックスの局所での消長について評価することによる検討が、効果的な歯周治療の上から重要と考え本研究を行い以下の実施結果を得た。 PDGF-2とIGF-Iの組み合わせによる創傷部への投与群では、術後5日目から上皮結合組織の炎症性細胞浸潤が減少するとともに、その繊維芽細胞の増生が著明になる傾向が認められた。このときフィブロネクチンの局在が高度になった後、コラーゲンI型およびIII型の強い局在が著名となっていった。一方TGF-βとIGF-Iの組み合わせでは、術後5日目から同様に上皮下結合組織の増生が顕著になる傾向が認められたが、外科的侵襲による炎症細胞浸潤の減少は、遅延した。このときのフィブロネクチンの局在は、他群とほぼ同程度であったがコラーゲンI型およびIII型の明らかな局在が、3〜5日程度PDGF-2とIGF-Iの組み合わせの群に比較して遅れて、現われる傾向が観察された。 以上のことから、TGF-βは歯周外科処置後の創傷治癒過程においても、繊維芽細胞の増殖による組織修復を促進する傾向にあるが、術後の炎症の改善が遅延し、コラーゲンの局在が遅くなる影響が認められ、歯周組織の再構築には比較的時間が要することがわかった。一方PDGF-2とIGF-Iの組み合わせ投与では、術後の結合組織の増生が比較的早期に著明で、これはIGF-Iがコンピテンス因子であるPDGFと相乗的な作用して、細胞増殖を促進したと考えられる。また、術後の炎症所見も早期に改善し、コラーゲンの局在も早期に増加傾向を認めたことから、PDGF-2とIGF-Iの組み合わせは、歯周外科処置後の正常な組織修復過程の増幅が、促進されることが示唆された。
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