本研究は、P.gingivaisに熱ショックを与え、collagenase、plasmin、dipeptidyle aminopeptidase(DAP)の活性の変化を調べた。その結果、30、37℃での各培養条件で+10℃の熱ショックを与えた場合において、いずれのプロテアーゼにおいても高い活性上昇が認められた(DAP IIの場合、30〜50%の活性上昇)。熱ショックタイムにおいては、1時間よりも2時間、4時間の方が活性の上昇は高かった。また、log期、stationary期の各細胞成長過程におけるヒートショックによる有意差は認められなかった。 また、今回精製したDAP IV、DAP IIを8Mグアニジン塩酸塩で変性を行った結果、DAP IVは、酵素の失活変性をうけずらく、DAP IIの方は十分な失活変性を示した。この変性したDAP IIの自発的再生は約10%の再生であり、BSA添加で再生収率の改善は認められなかった。これに対し、熱ショック由来のGroE(GroEL、GroES)を作用させ、酵素活性の変化をみたところ、ATP共在下で5倍モル量で約45%、15倍モル量添加で約85%にまで再生収率の上昇が認められた。また、GroELの存在の有無では、非存在下が45%の再生収率の低下が認められた。 以上の結果より、熱ショックによりある特定のプロテアーゼが影響され、この活性上昇が、HSPの分子シャペロン的役割により酵素の再構築がなされているのではないかと考えられる。これらのことから、口腔疾患の炎症、特に急性炎症時に伴う発熱などのストレスによる熱ショックが酵素活性の上昇をもたらし、それがさらに炎症の進行、増幅に関与するものと思われる。
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