研究概要 |
顎口腔系機能に異常が認められない正常有歯顎者を被験者として,ピ-ナッツ3gを被験者の自覚している習慣性咀嚼側および非習慣性咀嚼側にて咀嚼・嚥下させ,超音波診断装置と下顎運動解析装置を用いて,左右第二小臼歯遠心面を連ねた線上の正中部より左右1cm偏心した2点をそれぞれ舌作業側点と舌平衡側点とし,舌運動軌跡と下顎運動軌跡を記録,分析した.また,咀嚼効率についても篩分法を用いて両咀嚼側でピ-ナッツ3gを咀嚼させて測定した. その結果,1.習慣性咀嚼側咀嚼時における舌作業側点と舌平衡側点および非習慣性咀嚼側咀嚼時における舌作業側点の上下的運動距離は咀嚼の進行に伴い有意に増加した.2.習慣性咀嚼側咀嚼時における非習慣性咀嚼側咀嚼時における下顎の上下的,左右的,前後的運動距離は,それぞれ咀嚼の伴い有意に減少した.3.習慣性咀嚼側咀嚼時における舌作業側点上下的運動距離と下顎上下的運動距離との間には有意な正の相関が認められたが,非習慣性咀嚼側咀嚼時においては認められなかった.4.習慣性咀嚼側咀嚼時における舌作業側点上下的運動距離と下顎左右的運動距離との間には有意な負の相関が認められたが,非習慣性咀嚼側咀嚼時においては認められなかった.5.非習慣性咀嚼側咀嚼時の咀嚼効率は,習慣性咀嚼側咀嚼時のそれに比較して統計学的に有意に低下した.以上の結果から,習慣性咀嚼側咀嚼時においては,下顎と舌とが協調した運動を行っているのに対して,非習慣性咀嚼側咀嚼時においては,両者間の協調が欠けており,これが咀嚼効率に影響を及ぼしていることが明らかになった.
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