1、浸潤能の検索:肺血管内皮細胞層下への癌細胞の潜り込みを指標とした浸潤性の検討では、HGFで癌細胞を前処理したところいずれの癌細胞においても1.5から2倍に浸潤性が促進した。一方、trans-well chamberを用いた再構成基底膜通可能の検討ではSAS細胞で1.4倍の促進が認められたが、HSC-3細胞とCa9-22細胞ではHGFによる浸潤性の促進はみられなかった。また、SAS細胞では、肺血管内皮細胞層下への浸潤性がHGF濃度依存的に促進した。 2、基底膜成分への接着性:Matrigelへの接着性は用いたが癌細胞のいずれにおいても、HGF処理による変化はみられなかった。 3、運動能の検討:SAS細胞のみHGF処理により1.5倍の運動性の亢進が認められた。また、SAS細胞ではHGF濃度依存的に促進した。 4、増殖能の検討:SAS細胞についてHGF共存下での増殖性を検討したところ、有意差はみられないがやや増殖抑制的に作用した。 5、HGF刺激による浸潤シグナル:HGF刺激を行ったSAS細胞で、経時的にチロシンリン酸化が亢進する蛋白が認められた。さらに、抗FAK抗体による免疫沈降産物では一過性にチロシンリン酸化が亢進した。また、HGFによる浸潤シグナルにrhoが関与しうるかをC3酵素を用いて検討したところ、SAS細胞では浸潤性や運動能がC3酵素処理により約30%の抑制がみられ、C3酵素処理細胞ではHGF刺激を行ってもいずれも促進することはなかった。C3酵素処理細胞では、FAKのチロシンリン酸化はやや減少し、HGF刺激においてもそのチロシンリン酸化は増強されなかった。
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