研究概要 |
長距離神経欠損部に対する、凍結乾燥神経同種移植における神経再生のメカニズムの解明を目的とし、以下の実験を行った。 実験はニュージーランドホワイト種ウサギより座骨神経を採取し、凍結乾燥処理を行った後、日本白色種ウサギの左側大耳介神経の欠損部に長さ40mmの凍結乾燥神経を同種移植した。右側には対照として遊離自家神経移植を行った。手術12,18,24,30,48週後に動物を屠殺し、電気生理学的、形態学的観察を行った。電気生理学的観察では手術48週後の活動電位が、凍結乾燥群36.13m/sec、自家移植群42.07m/secとほぼ同等の結果であった。光学顕微鏡所見としては、両群共に、経日的に単位面積当たりの有髄神経線維数が増加していた。透過型電子顕微鏡所見としては両群間で再生様式の違いが認められた、対照の遊離自家神経移植群では、従来通りSchwann細胞索により軸索が誘導され神経線維の再形成が可能であったのに対して、凍結乾燥群ではSchwann細胞に頼らず軸索及び神経線維の再生が認められ、神経周膜の形成が認められた(本所見は、凍結乾燥処理神経の移植実験では、渉猟した範囲内で認められない)。以上のことより、長さ40mmの凍結乾燥同種神経移植においても形態学的、生理学的に良好な神経再生が認められ、臨床応用にも十分対応できると考えられた。 凍結乾燥神経移植片内の神経再生のメカニズムは、schwann細胞の基底膜構造が残遺する事により、神経再生が誘導されると言われている。しかし、この基底膜構造は移植後約30日で崩壊すると言う報告もある。本実験の結果でも、形態学的に基底膜構造による、神経再生の誘導所見は認められなかった。今後は、これらについて形態的、生化学的検索を行い、凍結乾燥同種移植による神経再生のメカニズムを解明していく方針である。
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