目的 十全大補湯の投与による咀嚼筋の血流の変化から顎関節症における漢方薬の効果を調べる事を目的とした。 方法 1.顎関節症モデルラットの作製 ラットをチアミラール腹腔内麻酔下で片側の顎関節付近に純アルコール0.2mlを注入して7日後に疾患モデルとして用いた。 2.漢方薬の投与 チアミラール腹腔内麻酔下の自発呼吸下とし、十二指腸部にカテーテルを挿入して、薬剤を投与した。漢方薬は十全大補湯エキスを精製水にて溶かして使用した。対照として生理食塩水を用いた。 3.顎関節部の血流測定 ラットの頭部を脳定位固定装置に固定し、レーザー血流計のプローブを筋膜を露出した顎関節付近に装着した。血流の安定待って薬を投与し、投与後15、30、60、90、120分まで測定した。処置側(A)と非処置側(N)の両方を同時に測定した。 結果 血流の左右差はN群では殆どみられなかったが、A群ではアルコール処理側が対照側の約1/2であった。血流の変化は生理食塩水のみを投与した群では投与後15分にA群とN群共に15〜30%の一過性の血流増加があったが、その後は大きな変化はなかった。十全大補湯群ではN群では投与後15分より20〜50%の血流増加が観察されたが、A群ではN群程は増加がみられなかった。 考察 顎関節症I型に対する十全大補湯の効果は血行改善にあると考えられる。本研究からは明瞭な結果はみられなかったが薬剤を急性投与したので著しい変化がみられなかったものと考えられる。したがって、慢性投与のモデル研究をすることでより明確な変化があると示唆された。
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