喉頭の感覚や運動に深く関与する上喉頭神経が、呼吸と嚥下運動にどのような役割を担っているかをWistar系ratを用いて検討した。Ratの上喉頭神経は喉頭付近で3枝に分かれる。本研究では、甲状軟骨前縁から喉頭に入る枝をR.Br、輪状甲状筋に分布する枝をM.Br、下咽頭収縮筋を経て甲状腺の背側に至る枝をC.Brとした。HRP神経標識法を用いて、各分枝の運動神経細胞の中枢局在および一次求心線維の中枢投射部位を検索した上で、機能的な解析を行うために、各分枝の中枢側切断端から遠心性神経放電を、末梢側切断端から求心性神経放電を導出した。その結果、R.Brは喉頭粘膜へのairflow刺激に応答する感覚線維を有し、それらの感覚情報は孤束核外側部に収束することが明らかになった。M.Brには感覚線維が含まれないことから輪状甲状筋にはproprioceptorは存在しないと考えられた。また、輪状甲状筋を支配する運動ニューロンは、主に吸息期に活動することが明らかになるとともに、延髄のrostral ventral respiration groupに属することが示唆された。C.Brに支配される下咽頭収縮筋にはon-off typeの応答を示すproprioceptorが存在し、その感覚情報は孤束核外側部に入力することが明らかになった。また、迷走神経背側運動核に小型の、疑核の吻側部には中型の運動ニューロンの細胞体が局在していた。下咽頭収縮筋にはproprioceptorが存在することにより、迷走神経背側運動核の小細胞は筋紡錘などを支配するγ-motoneuronの可能性が示唆された。
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