顎間固定が、身体にどの様な影響を及ぼすかということを生化学的に検討し、また同時に心理学的なアンケートを実施することにより、実際に感じるストレスと生化学的な変化にどの様な相関があるかを比較検討した.また測定するそれらの物質が、ストレスの指標として有用であるかも検討した. 対象:顎骨骨折にて当大学病院口腔外科に入院した患者の中で、非観血的に整復、顎間固定を施行した症例とした. 実験方法:生化学的測定は尿中よりカテコールアミン(アドレナリン、ノルアドレナリン)および副腎皮質ホルモンの1つであるコルチゾールの代謝産物17-hydroxycorticoids(OHCS)を測定した.(固定中2回、固定除去後1回)アンケートは、固定中2回生化学的測定と同時期に行った. 結果:今回の結果では17-OHCSは顎間固定により有意に増加していたが、カテコールアミンには、有意な変化は認められなかった. これらの結果から17-OHCSは、顎間固定によるストレスを反映していると思われたが、カテコールアミンについては有意な結果はでなかった. また今回の実験にて生体のストレス反応をよく反映していると思われる17-OHCSと、アンケートのなかのVAS(Visual Analyzing Scale)値の相関を検討したところ相関係数0.2と相関関係は認められなかった. 考察:今回尿中よりカテコールアミン(アドレナリン、ノルアドレナリン)および17-OHCSを測定したが、17-OHCSは身体の顎間固定によるストレスを反映していると思われ、ストレスの指標として有用であると思われた.また身体の侵襲を一切加えることなく測定できる事など利点も多く、今後アンケートや、カテコールアミン測定法などを改良し、症例を増やし検討をしていきたい.
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