本研究では、裂溝填塞材として使用されている光硬化型グラスアイオノマーセメント(フジIIILC)の保持率の改善を目的に、歯面処理剤の使用によりセメントの歯質接着性がどう変化するかを剪断による接着強度試験にて調査した。被験歯としては牛下顎前歯を使用した。被験歯は研究費にて購入した研磨機(MINIMET1000)にて唇側エナメル質を耐水研削紙600番まで研磨し被着面とした。被着面を各種歯面処理剤で20秒間処理し、10秒水洗、10秒乾燥の後、直径4mm×高さ1.5mmのテフロンチューブを被着面に置き、練和したセメントをチューブ内に填塞し、30秒間光照射した。出来上がった試料は、24時間37°Cの水中に保存した後、5°C30秒・55°C30秒を1回とし、500回のサーマルサイクリング試験実施後、剪断試験を実施し接着強度を測定した。実験群は歯面処理剤の種類によって(1)無処理群、(2)デンティンコンディショナ-群、(3)キャビティーコンディショナ-群、(4)CAagent群、(5)ボンドウェルLCコンディショナ-群、(6)スコッチボンドエッチングジェル群の6群とし、1群の試料数は8個とした。測定の結果、接着強度は(1)群5.54±1.31Mpa、(2)群12.51±1.84Mpa、(3)群15.21±1.41Mpa、(4)群15.19±1.14Mpa、(5)群15.23±1.02Mpa、(6)群15.10±1.45Mpaであった。有意差検定(t検定)の結果、(1)群と(2)〜(6)群の間、および(2)群と(3)〜(6)群の間には有意差があった(P<0.005)。今後このデータをもとに核種歯面処理剤を臨床使用し、フジIIILCの保持率に差が出るかを検討し、最適な歯面処理剤を検討する予定であるが、既に(2)群で使用した歯面処理剤を臨床使用して得られた3年調査データをまとめることが出来たので、この結果を第75回LADR総会(平成9年3月19〜23日、アメリカ)にて報告した。
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