申請者は最近、p-スルフィニルフェノール類(1)のプメラ-型転位反応によるキノン及び、保護されたジヒドロキノンの緩和で高収率な合成法を見出した。本法は、反応で生じるチオニウムイオン中間体のipso-位で酸素官能基に求核置換する新しいタイプの反応であり、電子豊富なフェノール環の一種の極性転換法である。本研究では、この新規酸素官能基導入法の拡充と、本方法論を発展させた種々の官能基の求核的導入法の開発を目的として、研究計画に基づき以下の研究を行った。 1.上記(1)のプメラ-型転位反応を種々の官能基を有する化合物に適用し、本法が、キノンおよび保護されたジヒドロキノン類の有用な一般合成法になることを明らかにした。更に、本法の原料化合物(1)の効率的な合成法を確立した。 2.上記の方法をペリ位に水酸基が連なる多環式系に応用し、それらの水酸基をシリレン体として保護することで本プメラ-型反応が収率良く進行すること、シリレン形成およびその除去も簡単に収率良く進行することを明らかにし、生物活性キノン系天然物に多く見られるペリヒドロキシ多環式ジヒドロキノン構造の有用な新合成法を開発した。更に、フェニルチオアセチレン側鎖を有するo-アシルフェノール化合物の分子内[4+2]環化付加反応と本法を組み合わせ、制癌性抗生物質フレデリカマイシンAのABCD環合成のための新方法論を開発することが出来た。 3.本プメラ-反応は、反応条件によって、ハロゲン基の導入、スルフィニル基のm-位への炭素求核種導入反応などが進行することが分かった。現在、その一般化を検討中である。
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