研究概要 |
我々が見い出したビシクロアセタール[(Rs)-1-(p-tolylsulfinyl)methyl-2,6-dioxabicyclo[2.2.2]octane ; (1)]の不斉開裂反応(J.Chem.Soc.,Chem.Commun.,1992,516.)の反応中間体と考えられるオキソニウム中間体を求核剤でトラップすることにより、ジアステレオ面選択的な官能基の導入とアセタールの不斉開裂反応を同時に行い、プロキラル中心とスルフィニル基のβ位に一挙に2つの不斉炭素を構築する手法を確立し、反応の立体化学を明らかにするとともに、生理活性天然物の合成に応用することを目的として研究を行った。1に対してアリルシラン存在下、四塩化チタンを作用させたところ反応は-78度でスムーズに進行し、テトラヒドロピラン体[(2S,5S,Rs)-2-allyl-5-hydroxymethyl-2-(p-tolylsulfinyl)methyltetrahydropyran ; (2)]が主成績体として得られた。生じた4種類のジアルテレオマ-の生成比は、反応温度、溶媒、用いるルイス酸などの影響を受け、最適条件では84:7:6:3の高い選択性で進行することが明らかとなった。また、X線結晶解析と化学変換の結果に基づいて、すべての成績体の立体化学を明らかにすることができた。その結果、pro-RのC-O結合の切断とその背面からの求核攻撃が優先的に進行していることが明らかとなった。求核剤をプロパルギルシランに変えても、高選択的に同じ立体化学を有するテトラヒドロピラン体が得られた。さらに、本反応の有用性を示すため、2を鍵中間体として緑藻Lyngbya majusucla Gomontより単離構造決定された抗菌物質malyngolideの合成に応用し、その不斉全合成に成功した。なお、補助金は補助条件の通り、ガラス器具や試薬などの消耗品に使用した。
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