(1)α-conotoxinMIの立体構造精密化 NMR解析とSimulated annealing法により決定された構造を2517分子からなる水の箱に入れて初期構造とし、NMRより得られた拘束条件を加えて分子動力学計算を行った。その結果、通常のSimulated annealing法で得られた立体構造では明らかでなかったα-conotoxin MIの二次構造についての知見が得られた。すなわち、α-conotoxin MIはCys4-Cys8の領域で3(10)ヘリックス、Gly9-Tyr12の領域でタイプ(I)型ベータターンを形成することが明らかとなった。また、同様の活性を持ちX線解析により立体構造が明かとなっているα-conotoxin GIと比較したところ、主鎖の立体構造に関して完全に一致することがわかった。このことは、この共通構造が、α-conotoxin MIとGIが同様な活性を保持するのに重要であることを示している。また、この計算は、あらわに水分子を扱う分子動力学計算がペプチドの立体構造精密化に非常に有効であることを示している。 (2)α-conotoxin MIのフォールディングシミュレーション コンピュータによるペプチドの立体構造構築の試みとして、α-conotoxin MIの配列を持つのびたペプチド鎖の水溶液中でのフォールデングシミュレーションを行った。その際、新たに用意したジスルフィド結合ポテンシャルと疎水結合ポテンシャルが、短時間で折り畳まれた構造を得るのに有効であることがわかった。さらに、複数得られた最終構造の中から、Ooiらにより報告されている水和エネルギーパラメータを用いて(1)で決定された立体構造に極めて近い構造を選び出せることがわかった。
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