研究概要 |
胃プロトンポンプであるH^+,K^+-ATPaseのcDNAをヒト腎臓由来の培養細胞に導入して、ポンプのATPase活性を細胞の膜画分に発現させた。さらに、H^+,K^+-ATPaseの触媒サブユニットであるαサブユニットの機能部位に変異を導入してβサブユニットと共に発現させて、その機能的な変化を観察した。本年度は、触媒中心のリン酸化部位(Asp-387)のほか、イオン認識部位と見られるアミノ酸残基に変異を導入して、それらの機能的な変化を観察した。 αサブユニットの4番目と5番目の膜貫通領域の間の原形質ループに存在するリン酸化部位(Asp-387)に変異を導入したところ、全ての変異体が活性を消失した。この場合、Asp→Gluというように側鎖のカルボキシル基を保持して、鎖の長さを変えただけでも、酵素活性が失われた。このことから、リン酸化部位には一定の厳格な構造が要求されるものと考えられた。 αサブユニットの4番目の膜貫通領域に存在するグルタミン酸残基(Glu-345)に変異を導入すると多くの変異体は活性を失ったが、グルタミン変異体(E345Q)は野生型の約40%の活性を保持した。この変異体は、K^+に対する親和性が野生型に比べて10倍以上低下しており、Glu-345がカチオン認識に寄与することが確認された。また、この変異体はATP、水素イオンに対する親和性の上昇、阻害剤であるオルトバナジン酸に対する感受性の低下が認められた。これらのことから、E345→Q変異の結果。ATPaseのコンフォメーションがE1フォームに偏ったことが確認された。 また、αサブユニットの6番目の膜貫通領域に存在する酸性のアミノ酸残基がカチオンの認識に寄与していることを確認した。
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