内皮細胞由来の血管弛緩因子として知られているエンドセリンの処置により、培養アストロサイトにおける1型インターロイキン-1受容体mRNAの発現が増加することをノーザンブロット法を用いて明らかにした。また、インターロイキン-1のアストロサイトに対する作用として、アストロサイトの増殖促進作用のあることが明らかとなった。また、培養ミクログリア細胞におけるインターロイキン-1βの発現調節機構を検討した結果、インターロイキン-1βmRNAの発現が、ATPおよびβアドレナリン受容体アゴニストであるイソプロテレノールにより誘導されることが明らかとなった。また、1型インターロイキン-1受容体が脳の特定領域の神経細胞および脳微小血管の内皮細胞で発現していることを以前の研究により明らかにしているが、本研究において、2型インターロイキン-1受容体が、正常ラット脳内ではほとんど発現していないが、興奮性神経毒であるカイニン酸の投与により脳の特定領域の神経細胞および脳微小血管の内皮細胞で発現誘導されることを新たに見いだした。以上の知見より、脳虚血あるいは興奮性神経毒による神経細胞の異常興奮あるいは損傷により、神経細胞からアドレナリン/ノルアドレナリンやATPなどの生理活性物質が遊離あるいは漏出され、それらがミクログリアに作用することによりインターロイキン-1の発現が誘導され、産生されたインターロイキン-1は神経細胞に作用する他、アストロサイトに作用してその増殖を促進する可能性、さらには、血管内皮細胞に作用して好中球やマクロファージなどの脳実質への浸潤を促進する可能性が考えられた。また、血管内皮細胞とアストロサイトの間にもエンドセリンを介した相互作用が存在する可能性が考えられた。
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