本研究は、1α水酸化酵素遺伝子多形性と骨粗鬆症との相関を見い出し、それを利用した骨粗鬆症遺伝子診断を実用化することを目的とするものである。そこでまず、酵母を用いたtwo hybrid systemにより1α水酸化酵素遺伝子の単離・構造解析を行った。Vitamin D_3 hydroxylase-associated protein(以下VDHAP)が1α水酸化酵素に会合する性質を利用し、LexA-VDHAP融合蛋白質とVP16-腎臓cDNAの融合蛋白質を酵母内で発現させた。2つの融合蛋白質が酵母内で会合するならば、β-ガラクトシダーゼ蛋白質が発現できるようになる。カラーセレクションによってVDHAPと会合が認められるcDNAクローンを選択的に得た。そのほとんどはミトコンドリアに局在する既知の蛋白質をコードしていたが、報告されている既知の塩基配列と全く類似性を有さず、既知のミトコンドリア型シトクロムP450のヘリックスK領域およびヘム結合領域において、ヘムに結合するシステイン残基の他、いくつかの部分で塩基配列およびアミノ酸配列で高い類似性が見られるクローンを得ることに成功した。さらに、ノーザンブロット解析の結果、ビタミンD欠乏飼料で飼育したヒヨコの腎臓では、このクローンのmRNAの発現は約2倍以上に増加していた。これは、報告されているビタミンD欠乏での1α水酸化酵素の活性の上昇と一致している。 今後、このクローンの全長を単離しその配列の解析を行う。さらに、COS細胞に遺伝子導入し、1α水酸化酵素活性を有しているが否かを検討する。そして、ヒト1α水酸化酵素遺伝子の単離及び遺伝子構造を決定し、骨粗鬆症患者と正常人との間で1α水酸化酵素遺伝子の変異部位を特定する。
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