研究概要 |
本研究の目的はインターロイキン1レセプター(IL-1R)の発現調節機構を明らかにすることである。そこで、本研究ではIL-1Rの発現変化をin vitro、及び、in vivoの両面から検討した。 In vitroの実験では、ヒト線維芽細胞株TIG-1にチロシンキナーゼの阻害剤であるゲニステインで処理すると、^<125>IラベルしたIL-1の結合をゲニステインは用量依存的、また、経時的にも抑制した。スキャッチャードプロット解析の結果、ゲニステインはIL-1Rの親和性を変えることなく、細胞表面上のレセプター分子を減少させていた。また、ゲニステイン前処理により、細胞表面上のIL-1R分子を減少させておくと、IL-1誘導インターロイキン6(1L-6)の産生が抑制された。これらのことから、恒常的なIL-1Rの発現にはチロシンキナーゼが関与していることが、本研究で初めて明らかとなった。しかし、ゲニステインはIL-1R mRNAの発現を抑制しなっかったことから、ゲニステインは転写後の調節に働いていることが示唆された。更に、蛋白合成阻害剤であるサイクロヘキシミド存在下でもゲニステインの作用が認められたことから、ゲニステインは翻訳過程以後に作用していることが示唆された。 In vivoの実験では、グラム陰性菌のエンドトキシンであるリポ多糖(LPS)投与マウスの肝臓でIL-1R mRNAの発現が上昇していることが、in situハイブリダイゼイション、及び、rverse-transcriptase chain reaction (RT-PCR)法により明らかとなった。LPSにより誘導されるサイトカイン類(IL-1,IL-6,TNF(腫瘍壊死因子))を投与して調べた結果、IL-1,IL-6,TNFいずれもIL-1R mRNAの発現が誘導されたことから、in vivoにおいてはこれらサイトカインのネットワークによりIL-1R mRNAの発現が調節されており、IL-1の反応性が上昇していることが示唆された。肝臓はLPSにより誘導されるサイトカインにより急性期蛋白を作ることが知られているが、IL-1Rの発現の上昇もこの作用に関与しているのかもしれない。 更に詳しく単離した初代培養肝細胞を用いて検討した。LPSで誘導されるサイトカイン類(IL-1,IL-6)、及び、LPS投与マウスの血清でもIL-1R mRNAが誘導されたが、TNFでは誘導されなかった。しかし、in vivoではTNFはIL-1やIL-6を誘導することから、TNF投与による肝臓でのIL-1R mRNAの発現増強はこれらのサイトカインによるものかもしれない。
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