研究概要 |
1)コリンアセチルトランスフェラーゼ(ChAT)mRNAを発現する血球細胞種の特定 T細胞系細胞株7種(CEM,HSB-2,HPB-ALL,Jurkat,MOLT-3,MOLT-4,HUT-78)、B細胞系細胞株4種(NALM-1,Daudi,KOPN-8,NALM-6)およびリンパ系前駆細胞株2種(NALM-16,REH)を用いた。各細胞株よりpoly(A)^+RNAを抽出し、ヒト脳ChAT遺伝子の配列の一部をプライマーとして逆転写-polymerase chain reaction(PCR)を行なった。ChAT mRNAの発現は、T細胞系細胞株にのみ認められ、B細胞系細胞株およびリンパ系前駆細胞株には認められなかった。各細胞株中のアセチルコリン(ACh)含量は、ChAT mRNA発現の有無と相関していた。以上より、血球細胞のうちT細胞のみがChAT mRNAを発現していることが明らかとなった。 2)ChAT mRNAのノーザンブロット解析 最もACh合成能が高いMOLT-3より調製したpoly(A)^+RNA用いて、ChAT mRNA発現量およびサイズをノーザンブロット解析した。^<32>p放射ラベルしたChAT特異的cDNAプローブをハイブリダイズさせ、オートラジオグラムをとった。しかしながら、ChAT mRNAは検出できなかった。ChAT mRNA発現量が脳と比較して非常に少ないことが考えられる。予備実験で半定量的-PCRを行い、リンパ球では脳と比較して少くとも1000分の1以下のChAT mRNA発現量であることを確認した。このことは、リンパ球のChAT活性が、脳で最もChAT活性の高い線条体の1000分の1程度であることに一致する。 3)ChAT全塩基配列の解析 脳ChATの塩基配列より作製したPCRプライマーを用いて、T細胞中のChAT mRNAを増幅した。しかしながら、発現量はが低いためクローニングに十分なcDNAを得られず、本年度中の全塩基配列決定は実現できなかった。引き続きPCR条件などのクローニング戦略を再検討した上で実施予定である。
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