モルモット盲腸紐平滑筋を用いいたこれまでの解析から、ムスカリン受容体に強い刺激を加えると、受容体を介したカルシウム動員性細胞内情報伝達過程の種々の段階で複合的に脱感作性変化が進行すること、また、これらの脱感作の進行を阻害する生理機能(脱感作進行阻害性再感作)も同時に作動することが明らかとなった。脱感作機構および脱感作の進行を阻害する再感作機構を明らかにすることは、生体制御機構の解明という面のみならず薬物治療の面でも重要な課題である。当該年度は、これらの二重制御機構にカルシウム・カルモジュリン系がどのように関与しているのかを明らかにする目的で、受容体・G蛋白質レベルでの脱感作/再感作に対するカルモジュリン阻害薬W-7の作用を調べた。その結果、(1)受容体・G蛋白質レベルでの脱感作は、刺激初期に迅速に作動するW-7感受性脱感作機構と、刺激後期に持続性に作動するW-7非感受性脱感作機構の異なる2つの機構により誘発されること、(2)受容体・G蛋白質レベルでの再感作は、刺激初期にW-7感受性脱感作が進行した場合にのみ誘発されることが明らかとなった。これらの結果は、受容体・G蛋白質レベルでの脱感作/再感作に対するカルシウム除去の効果と一致したことから、刺激初期の脱感作は、カルシウム・カルモジュリン依存性機構により誘発され、この機構が解除されることにより再感作が誘発されること、一方、刺激後期の脱感作は、カルシウム・カルモジュリン非依存性機構により誘発される可能性が示唆される。今後、脱感作/再感作に関与するカルシウム・カルモジュリンの標的因子を特定していくことにより、細胞応答の制御機構の詳細を把握し、それが更に、脱感作に起因する疾病・老化・薬物治療効果低下に対する新対処法に結びつくことが期待される。
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