ハムスター肝にはアフラトキシンB1に対し極めて強い代謝活性化能を有するシトクロムP450分子種(CYP2A8)が存在する。我々はこれまでに、初代培養肝細胞においてCYP2A8が3メチルコランスレン(3MC)によって誘導されること、またこの誘導がオカダ酸(OA)によって増強されることを明らかにしてきた。OAは転写調節因子のAP-1の活性化作用を有することが知られている。そこで、本研究においては3MCによるCYP2A8の誘導機構におけるAP-1の関与を検討した。まずはじめに、初代培養ハムスター肝細胞にOAを添加し、AP-1の発現量をゲルシフトアッセイ、ノーザンブロッティングを用いて測定し、またAP-1に依存した転写活性をAP-1結合配列を含むレポーター遺伝子を用いたレポータアッセイで測定したところ、AP-1の誘導とAP-1に依存した転写活性の上昇が認められた。またAP-1の構成因子であるc-Junを発現させるプラスミド(pRSV-c-Jun)をハムスター肝細胞に導入し、3MCによるCYP2A8の誘導に対する影響をノーザンブロッティングにより測定し調べたところ、AP-1に依存した転写活性の上昇ととも、3MCによるCYP2A8誘導の増強が観察された。これらの変動はトランスフェクションするpRSV-c-Junの量に依存していた。以上の結果から、3MCによるCYP2A8の誘導機構にAP-1が関与していることが示唆された。
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