研究概要 |
私は、以下に記述するように、新しいシスチン含有ペプチドの高効率的合成法を開発し、これを用いて抗HIV活性ペプチドの誘導体を数種類合成し、構造活性相関研究を行った。 最近、アミノ酸数十残基のペプチドの化学合成には、固相担体(樹脂)上で保護ペプチド鎖を構築する固相合成法が用いられることが多い。シスチン含有ペプチドの化学合成においては、脱保護(保護ペプチド鎖構築後のペプチドの樹脂からの切断と各アミノ酸側鎖の保護基の除去)とジスルフィド結合形成が、合成の正否を握る重要なステップである。一般的には、酸により保護ペプチドを脱保護し、その後、水系溶媒中での空気酸化によりジスルフィド結合形成する方法がとられており、脱保護とジスルフィド結合形成はそれぞれ別々に行っている。私は、トリフルオロ酢酸中のスルホキシド(DMSO)-シリル化合物(TMSCI)によりこの二つのステップを同時に行えることを見い出した。 1.TMSCI(10eq)-DMSO(300eq)/TFA系による側鎖保護アミノ酸の保護基の定量的な脱保護をHPLC、MSで確認した。また、Alko resin,Rink amide resinからのアミノ酸の定量的な切断をアミノ酸分析機で確認した。 2.最近、タキプレシン及びポリフェムシンから誘導したT22が天然品の約1000倍の抗HIV活性を有することを見い出した。そこで、このT22の誘導体T131をモデルペプチドとしてTMSCI-DMSO/TFA系を用いて合成しその有用性を確認した。 3.本合成法を用いてT22の種々の誘導体ペプチドを合成し、構造活性相関研究を行い、T22の活性発現部位を明らかにした。 4.本法はアミノ酸置換誘導体等の非天然型ペプチドの合成にも応用可能であることを確認し、ジスルフィド結合を有するペプチドの構造活性相関研究に試料を提供する有用な方法であることがわかった。
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