研究概要 |
血管内皮細胞-癌細胞の接着抑制を作用機序とした癌転移抑制剤の開発を行うにあたり,まず血管内皮細胞への接着抑制を容易に再現よく評価できる実験系が必要となる.これまでの血管内皮細胞への接着評価は,培養血管内皮細胞上に癌細胞を添加し,一定時間後洗浄操作により,接着・非接着細胞を分離・除去する方法が用いられてきた.しかしながら,本方法は洗浄操作を一定にすることが困難であり,再現性の面で問題点を有している. そこで,本問題点をまず今回の研究の最重要課題と考え,血管内皮細胞への細胞接着評価系の確立を第一の研究目的とし,検討を行い,遠心操作により接着・非接着細胞を分離する方法を考案した.本方法は遠心力により接着・非接着細胞の分離を行うため,分離条件が一定かつ数値化できるという点で,非常に再現性の良い接着抑制評価系である. 次に,まずリポソームの作成を行い,リポソームが形成されていることを確認後,リポソームへのシアリルルイスXの組み込みを行い,現在その接着抑制効果をin vitroの系により検討中である. さらにリポソームという形態にとらわれず,血管内皮細胞への接着を阻害する化合物は,癌転移抑制剤となりうることから,種々化合物の血管内皮細胞への接着抑制効果をスクリーニングしたところ,インドネシア原産植物より単離・精製された化合物であるbrucein Bが白血球-血管内皮細胞への接着をわずか1μMという低用量で,細胞傷害性を有することなく,阻害することを見いだした. 本成果はInflammation誌へ投稿し,受理され,現在印刷中である.
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