遺伝的血漿中キニノゲン欠損であるBrown Norway Katholiekラットの高分子キニノゲンは、163番目のアラニンがスレオニンに変異しており、この一アミノ酸置換が原因で、このラットの肝臓で生合成されたキニノゲンは肝細胞から血中への分泌に障害を生じている。そこで本研究においてはまずBrown Norway Katholiekラットを分泌異常症を一モデルとして、そのキャラクタライズを行った。 Brown Norway Katholiekラットの変異高分子キニノゲンcDNAを哺乳類動物細胞に発現させ、細胞内プロセッシングを解析した結果、変異高分子キニノゲンは小胞体における初期生合成において、正常分子同様にN-結合型糖鎖の付加を受けたのちに、さらに少なくともトランスゴルジネットワークまで輸送されシアル酸の転移を受けながらも、細胞外への分泌は妨げられていることが判明した。これは、小胞体で輸送が停止していないという点で、既に報告されている幾つかの血漿蛋白質の分泌障害とは異なった新しいタイプであること示された。さらにこの結果は、細胞内において新生された異常蛋白質が、小胞体で誤った分子構造を形成するが故に、小胞体の分子シャペロンにより速やかに認識され、細胞内で処理される以外にも、ゴルジコンパートメント以降においてもまた、分泌性異常蛋白質の特異的選別・認識機構が存在していることを推定する結果であると考えられる。
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