研究概要 |
1.アミノ安息香酸のラット小腸吸収は構造異性体間で明らかに異なり、OABAではほとんど吸収がみらなかった。PABA、MABAの吸収は、投与濃度依存的であり、空腸部は回腸部よりもみかけの取込みに関する親和性の高いことが示された。一方、2,4-dinitrophenolなどの代謝阻害剤によりPABAの取込み、アセチル体(Ac-)への代謝、その粘膜側への排出に関する各速度論的パラメータが減少し、これらの過程は全てエネルギー依存性であることが示された。更に、Ac-PABAの腸管腔への排出に関するパラメータは、P-糖タンパク質(P-gp)の基質であるverapamilの併用によっては変化せず、構造類似体のsalicylic acidや有機アニオン系薬物のprobenecid等の併用により減少することが明らかとなった。以上、PABAの吸収に伴うAc-PABAの腸管腔内への分泌にはP-gp以外の能動的排出機構の関与することを示唆することができた。2.calcein等有機アニオン系薬物の消化管粘膜透過機構に関して、(1)ラット消化管粘膜において、calceinおよびphenol redの粘膜側(M)から漿膜側(S)への透過性には濃度依存性が認められ、また、SからMへの透過性より低いという方向性が観察された。その吸収方向への透過はATP阻害剤やprobenecidの共存下で増大し、透過の方向性は減少した。(2)calcein-AM取込み後の粘膜組織からのcalceinの排出にも方向性が認められ、Mへの排出量はSへの排出量より有意に高く、また、このMへの排出はATP阻害剤やprobenecidで有意に抑制されたがverapamilでは抑制されなかった。同様の現象は、Caco-2単層膜を用いた系においても確認され、上皮細胞層にcalcein等を排出するP-gp以外の排出ポンプが存在することを示唆すると同時に、Caco-2単層膜の評価系としての有用性を示唆することができた。 以上、本研究より、消化管の代謝・排泄機能を理解する上で有益な基礎的情報が得られたものと考える。
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