研究概要 |
ラットに精製ヒト血清アミロイドA(SAA)を免役し、4種(反応パターンから)のモノクロナル抗体(MoAb)を作製した。合成ペプチドを用いたエピトープマッピングで2種が同定された(SAAの15位,30位に反応することからそれぞれanti-SAA15,anti-SAA30と命名)が、他は同定できなかった。そこで終末コドンを挿入しC末端を欠損したSAAcDNAを発現ベクターに組み込み、大腸菌にていく種かのC末端部分欠損SAAを作製した。これら修飾蛋白に対し、イムノブロット法で各MoAbの反応性を検討した結果、SAA90位とSAAC末端に反応するクローン(anti-SAA90とanti-SAA100)の存在がわかった。この2種類の抗体で、ヒトAAアミロイド組織を免疫染色したが,anti-SAA90は陽性染色されるものがあったが、anti-SAA100に染色される例はなく、ヒトAAアミロイド組織においてはSAAC末端が欠如していることが確認された。ヒトAAアミロイドの形成においては、SAAが線維化する以前またはその過程中にC末端の蛋白分解が起こることが示唆された。一方、アミロイド誘発中のマウスにヒトSAAを投与したところ、SAAが全分子のままでアミロイド沈着に取り込まれた。このことから、SAAC末端分解ひいてはSAAに対する異化作用がマウスモデルとヒトでは異なることが示唆された。今回得られた抗体は、アミロイド線維化のメカニズムを追及するうえで、また臨床的にもアミロイドの成熟度を知るうえで有用と考えられた。
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