血清IgGの糖鎖はN-グリコシド結合でFc部分に付着している。臍帯血のIgGは母体由来と考えられるが、糖鎖はIgGの立体構造を規定するため、IgGの胎盤通過性に糖鎖が影響を与える可能性がある。そこで臍帯血IgGの糖鎖を分析、成人との比較を試みた。 24名の母親の同意のもと分娩時に臍帯血を採取した。年齢は30.1±4.2歳(平均値±SD)であった。新生児は男児14例、女児10例で平均在胎週数は37.5±3.5週、出生時体重は2745±750gであった。対照群として健常成人11名(26.5±5.6歳)からも血清を採取、IgGを精製したのちrN-グリカナーゼ処理を行い、遊離したオリゴ糖にFMOCを標識し、アミド80カラムでHPLC分析を行った。 その結果、臍帯血IgGでは、非還元末端側にガラクトースをもつ糖鎖の割合が成人より有意に高いことが判った。すなわちガラクトースをもたない非ガラクトシル糖鎖に対するガラクトシル糖鎖の割合(G/N比)は、成人で1.60±0.59であったが、臍帯血では4.3倍の6.85±4.35であった(p=4.87x10^<-6>)。在胎週数とG/N比の間に明らかな相関は認められず、出生時体重、血清IgG濃度や母体年齢とG/N比の間にも明らかな相関を認めなかった。 臍帯血にみられたガラクトシル糖鎖の増加は、過去の報告にある1歳から70歳までの結果よりもはるかに高い。ガラクトシル糖鎖をもつIgGは血清中の半減期が非ガラクトシル糖鎖よりも長いと報告されているため、ガラクトシル糖鎖の著明な増加は、新生児の感染防御の上で有利な機構と推定された。現在、同方法にて母体血IgGでのガラクトシル糖鎖の定量と、母児間の比較が進行中である。
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