申請者は、本研究でまず培養血管内皮細胞(EC)とその表面から放出される小さな膜小胞体(small vesicle;SV)に関する基礎的研究を行った。Lipopolysaccharide(LPS)でECを刺激することによりその培養上清中に放出されたSVを分離し、さらにその表面上に組織因子(TF)が発現していることをFlow Cytometry法、ELISA法、免役電顕法で証明した。我々の得た結果では、SV上のTF発現は、EC表面上での発現と比較してやや遅れて約12時間後にピークを示し、24時間後にはほぼ消失した。またTF依存性のfactor Xaの発現もELISA法で明らかにし、このECから放出されるSVは、procoagulant activityを有していることを証明した。この基礎的検討をふまえて、過凝固状態と考えられるDIC症例においてその血中のSVを検出し、さらにTF発現の有無について検討した。研究課題であった肺癌合併DIC症例については、症例数が十分でなかったため、肺癌も含めた悪性腫瘍や、血液疾患によるDIC78例を対象とした。多血小板血漿を分離し、FCMほうにより血小板分画(SV)におけるTF発現について観察したところ、DICでは他の疾患群(膠原病など)や健常群と比較して、有意にSV上のTF発現が亢進していた。また個々のfactorについて見てみると、DIC患者血中SV上TFは、DIC scoreと正の相関を示し、また血小板数とは負の相関を示した。我々の今回のデータから、過凝固状態において、SVは血栓形成傾向に深く関与している可能性が示唆され、DICの病態を考える上で重要な意味があると考えられた。
|