1.アポトーシス誘導に対するセラミドアナログの影響 近年、腫瘍壊死因子などのリガンドによる細胞刺激時に、セラミドがシグナル伝達のセカンドメッセンジャーとしての役割を果たすと考えられるようになった。本研究では、このようなセラミドの役割を分子論的に解明するために、上記リガンドの活性をミミックすると考えられている膜透過型セラミドのトランス2重結合の役割に着目し、シス2重結合体、3重結合を導入したアセチレンタイプのセラミド誘導体を化学合成した。そしてHL60細胞に対するアポトーシス誘導活性を指標に構造活性相関を調べた。その結果、トランス2重結合は必ずしも必要ではなく、シス2重結合体でも同等以上の活性を示し、3重結合体では非常に強い活性を示すことが明らかなった。 2.セラミドの微量定量法 新規定量法として、セラミドのアルコール基と蛍光試薬anthroylnitrileを反応させ、HPLCで定量する方法を試みた。まず、セラミドのN-アシル鎖を変えた9種の分子種を化学合成し、これに蛍光ラベルしたスタンダード標品が逆相カラムを用いたHPLCにより分離可能なことを確かめた。また検出限界はサブピコモルレベルであり、この方法はHL60細胞中のセラミドの定量も可能であることが確認できた。さらに、各種脂肪酸を培地中に加えたときのセラミドの変動を調べると、脂肪酸栄養によりセラミド分子種の変動が認められた。今後、実際にシグナル伝達を担うセラミド分子種についての検討を行う予定である。
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