水は、食品においてもっとも多く存在する成分であり、その含有量は食品の性質を左右する。しかし、その定量法として一般的に用いられている乾燥法は、時間がかかる、正しく水分が測定できているとは言えない、などの欠点を有する。そこで、本研究では、近年、その食品分析への利用が広がりつつある近赤外分光法を用いた、迅速・簡便、かつ正確な食品中の水分定量法の開発を試みた。 まず、各種親水性溶媒に水を加えて濃度系列を作成し、近赤外スペクトルを測定し、水由来の吸収ピーク波長における吸光度と水分含量との間で回帰分析を行ったところ、ジメチルスフォキシド、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドを用いた場合に高い相関が得られた。次に、水分含量の異なるでんぷんからこれらの溶媒で水分を抽出し、その近赤外スペクトルを測定し、乾燥法で得られた結果との間で回帰分析を行ったところ、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドを用いた場合に高い相関が得られた。また、でんぷんの種類を、可溶性、馬鈴薯、サツマイモ、トウモロコシ、小麦と変えても、得られた回帰方程式の定数項および回帰係数に大きな差は見られなかった。さらに、でんぷん以外の粉末食品(シクロデキストリン、小麦粉、上新粉、餅子、黄粉、ココア、脱脂粉乳、胡椒)についても同様の実験を行ったところ、ほぼ同様の結果が得られた。 以上の結果から、本法は一般的に広く用いることのできる、新しい水分定量法となりうることが示唆された。とくに、飯粒などのペースト状の食品や、ココアなどの脂質含量の高い食品のように、乾燥法では測定が困難である食品について有用な手法であると考えられる。
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