研究概要 |
ランナーがピッチやストライド長を規定されずに自然に走る時が最も効率的であるというそのメカニズムを調べる目的で,低速度と高速度についてそれぞれ4種類の異なるピッチでのランニングを行わせ,異なるピッチのランニングが酸素摂取量や心拍数および脚の筋内酸素動態(近赤外分光法)に及ぼす影響を検討した。対象は陸上競技の中・長距離選手を含む男子10名であった。方法:低速度(60%VO_2max),高速度(80%VO_2max)の2速度において、自由走行に加えそれぞれ4種類の異なるピッチ(自由走行時のピッチを基準として、+5〜7%、+10〜12%、-5〜-7%、-10〜-12%)でのランニングを各4分間ずつ行わせた。この時の換気量、酸素摂取量、心拍数、血中乳酸濃度、および右脚腓腹筋のOxy-Hb・Mb濃度の変化(近赤外分光装置(オムロン社製))を測定した。4種類の異なるピッチでのランニング時の値は、換気量、酸素摂取量および心拍数においては低、高速時ともにいずれの条件においても自由走行時の値よりも有意に高値を示した。血中乳酸濃度については、低速度ではピッチを最も少なくした条件(-10〜-12%)にのみ有意に高い値を示し、高速時では、ピッチを最も少なくした条件と多くした条件(+10〜-12%)で自由走行時に比べ有意に高値を示した。筋の酸素動態を示すとされているOxy-Hb・Mb濃度(運動中の平均吸光度を指標)については、血中乳酸濃度の動態とほぼ同様の傾向を示した。以上のことから、ランニングにおけるピッチやストライドを変化させた場合の生体における換気量、酸素摂取量および心拍数の反応と筋の酸素動態や血中乳酸濃度などの末梢の反応とは異なることが示唆された。
|