老化促進モデルマウス(SAMP6)を用いて、II型骨粗鬆症の発症機序およびこれに対するメカニカルストレスの効果とそのメカニズムについて検討した。実験には、生後30、40、60週齢の雌雄SAMP6ならびにコントロールのマウス(SAMR1)を用いた。申請者が独自に開発した自動制御式のメカニカルストレス発生装置を用い、麻酔下において、マウスの右側下肢膝部(大腿骨遠位部および脛骨近位部)に最小加重0.5kgから最大加重2kgのサイン波負荷を3Hzの加重頻度で10分間負荷した。その5日後、剖検により、脛骨を摘出し、DEXA法および骨形態計測法による解析を行った。骨形成のマーカーであるテトラサイクリン系抗生物質のカルセインとオキシテトラサイクリンを、メカニカルストレス負荷および剖検の12時間前に腹腔内投与した。摘出した脛骨は70%アルコールにて固定し、DEXA法により骨塩密度を測定した。その後、一連の脱水過程を経て、Villanueva bone染色を施し、メチルメタクリレイトによる包埋を行い、厚さ数μmの非脱灰薄切標本を作成した。 現時点では、生後30週齢マウスの解析が完了しているので、その結果について考察する。SAMP6の大腿骨骨塩密度は生後40週齢から減少し始めるというこれまの報告と一致して、生後30週齢マウスの骨塩量および骨塩密度は、SAMP6とSAMR1とで有意な差異は認められなかったので、当初の目的の通り、骨量が減少する前の骨に対するメカニカルストレスの影響を調べることが可能となった。骨形態計測の結果においても、骨形成系および骨吸収系のいずれのパラ-メーターにおいても、両群間で有意な差異は認められなかった。しかし、SAMP6の骨形成率はコントールよりも25%低値を示し、骨形成が低下傾向にあることが示唆された。メカニカルストレスを加えると、コントロールマウスの骨に顕著な骨形成が誘起された。同様な変化はSAMP6においても観察された。以上のように、II型骨粗鬆症が発症し骨量が低下し始める前の骨では、メカニカルストレスに対する正常な適応反応がみられることが明らかになった。
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