研究概要 |
本研究ではトレーニング環境の違いが身体の調節機能に及ぼす影響を検討するため、水中でトレーニングしている者と陸上でトレーニングしている者の運動時体温調節機構、特に発汗調節の違いを比較した. 水中でトレーニングしている者として水泳選手7名(年齢19±1才、身長174.6±5.0cm、体重66.2kg、最大酸素摂取量57.4±3.7ml/kg/minおよび%脂肪11.39±0.90%)、陸上でトレーニングしている者として陸上競技者1名、サッカー選手5名および野球選手2名(計8名、年齢20±1才、身長170.6±5.6cm、体重65.6±6.6kg、最大酸素摂取量58.3±4.8ml/kg/minおよび%脂肪11.37±3.10%)に対して、最大酸素摂取量の50%の自転車運動を40分間負荷した.環境条件は環境温25℃、相対湿度50%とし、実験中の直腸温、皮膚温(前腕、胸部、大腿および下腿)、局所発汗量(前腕と肩甲骨下部;カプセル換気法)、酸素摂取量および心拍数を連続的(毎分)に測定した.また,実験前後の体重測定より、体重減少量を算出した. 両グループの身体特性には顕著な差は認められなかった.運動中の酸素摂取量、心拍数、直腸温および平均皮膚温はグループ間に差がなかったが、背部の局所発汗量は陸上でトレーニングしているグループの方が多かった(P<0.05).また、平均体温と局所発汗量の関係においても背部にグループ差が認められた.これらのことから、トレーニングを行う環境(水中で行うのか、陸上で行うのか)の違いによって運動時の体温調節機構の改善の程度は異なり、陸上でトレーニングを行う方がその程度は大きいことが考えられる.また、その違いは身体の躯幹部のみの発汗量に認められたことは、トレーニングを行う環境の影響は末梢の要因に起因している可能性があることを示唆している.
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