延髄呼吸中枢から頚髄へ至る経路を片側切断し、横隔膜支配運動ニューロン(PhrMN)を2週間不活動にした後、PhrMNの形態的・代謝的特性を調べた。その結果、以下の3点が明らかになった。 1.PhrMNの神経終末を免疫組織化学的に調べた結果、横隔膜タイプ1線維に接合している神経終末は変化していないのに対して、タイプ2線維に接合している神経終末面積(511μm^2)はコントロール群の神経終末面積(344μm^2)に比べて有意に拡大していた。 2.PhrMNの細胞体を組織化学的に調べた結果、平均細胞体直径(26.7μm)はコントロール群の平均細胞体直径(29.4μm)に比べて減少していた。これは、タイプ2線維を支配していると考えられる大型PhrMN(直径>40μm)の数が、実験群において減少したことが主な原因であった。 3.PhrMNの細胞体において、酸化酵素SDH活性を酵素組織化学的染色像をもとに分析した結果、実験群(0.145O.D.unit)とコントロール群(0.151O.D.unit)の間に差は認められなかった。 以上の結果から、頚髄半切によって生じた横隔膜支配運動ニューロンの不活動に対する適応は主にタイプ2線維を支配する大型運動ニューロンにおいて起こることが明らかになった。代謝的適応については今回は否定的な結果であったが、今後、不活動の期間等を考慮してさらに検討していく予定である。
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