研究概要 |
女性ホルモンの減少と運動が免疫機能および血清脂質に与える影響について検討した。40〜54歳の閉経期周辺の女性30名を対象に運動を中心とした教室を開催し、教室開始前、6カ月後および1年後の運動の影響について観察した。運動教室は週1回、90分とし、運動プログラムは有酸素運動(40〜60%VO_2 max)を中心に行った。また、参加者には教室開始時から1週間、毎日歩数を記録させ、その後に1日の歩数が2,000歩増となるように歩行を促した。結果の概要は以下のようであった。 1.一日あたりの平均歩数について:対象者の一日あたりの平均歩数は教室開始後1週間では約6,000歩であったが、その後1ヶ月で約8,000歩となり有意差が認められた(p<0.01)。2ヶ月以降も約8,700〜9,100歩の間で推移した。 2.月経状態(有経群と閉経群)による免疫機能および血清脂質の変化について:リンパ球増殖能とIL-2産生能において、初期値の比較では両群に差異は認められなかった。NK活性では、有経群で高値傾向を示したが有意は認められなかった。その後の変化では、有経群のリンパ球増殖能において6ヶ月後に増加傾向(約10%)を示し、1年後に有意な増加(28%)を示した(p<0.01)。閉経群では、6ヶ月後と1年後で増加傾向(約6〜12%)を示した。IL-2産生能は、両群ともに1年後に有意な増加(約70〜80%)を示した(p<0.01)。血清脂質の初期値の比較では、TC(有経群:207mg/dl,閉経群:226mg/dl)、TC/HDL(有経群:3.81,閉経群:4.39)、LPO(有経群:3.2nmol/ml,閉経群:3.7nmol/ml)でそれぞれ閉経群が高値傾向を示し、HDL(有経群:58mg/dl,閉経群:55mg/dl)では閉経群が低値傾向を示した。その後の変化では、有経群のTCで1年後において約6%、閉経群で6ヶ月後において約13%それぞれ減少し、改善傾向を示した。HDLでは、両群で6ヶ月後と1年後において有意に高値を示した(p<0.1〜p<0.01)。TC/HDLでは、両群ともに6ヶ月後と1年後に有意な改善が認められた(p<0.1〜p<0.05)。 以上の結果から、運動はホルモン環境に影響されることなくリンパ球機能および血清脂質を改善することが明らかとなった。このことから、継続的な運動は閉経期女性の健康の保持増進に好影響を及ぼすものと思われた。
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