研究概要 |
本研究は,中学校の第1学年の数学科の授業を,ヴィゴツキ-の「発達の最近接領域」論を視座として分析することを目的とした。具体的には,数学に特徴的な実践の諸相,すなわち,数学的問題の構成,解法の手だての計画,解法の構成,結果の検討,問題や解法の再検討といった相が,実際の授業過程においてどのようにして社会的に構成されるのかを,「参加」と「談話」の形態という対人的相互行為の概念を分析視点として分析を行った。中学校での数学科の授業過程における社会的相互行為と生徒の数学的認知活動の依存性を探究するために,石川県の公立中学校第1学年2クラスを調査対象として設定し,そこで営まれる数学の授業を,一年間にわたり参与観察した。この過程でえられた授業のプロトコールから,授業における特徴的な「参加」の形態と「談話」の形態を抽り出すとともに,個々の生徒の実際の数学的作業の態様を記述した。これらのデータの相互関係を視野に入れつつ,当該の数学の授業過程における社会的相互行為と生徒の数学的認知活動の依存性についての仮説を提示した。こうした研究成果は、日本数学教育学会ならびに、第20回数学教育心理国際会議において公表された。
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